130万の壁の新ルールとは?残業で超えても妻が扶養のままでいられる条件

130万の壁の新ルールとは?残業で超えても妻が扶養のままでいられる条件

「残業で130万円を超えたら、扶養から外れる」。そう思って、年末にシフトを減らしているパートの人は多いと思います。

でも2026年4月1日から、社会保険の扶養の130万円は、実際にもらった額ではなく、労働契約で決まっている時給・時間・日数から見込んだ年収で判定する取扱いが始まりました。契約に無い残業で一時的に増えた分は、その年収に入りません。

僕の家は、妻が正社員で育休中なので、パートの130万円の壁はそのまま当てはまりません。ただ、母は62歳でパートをしていて、身近な話です。厚生労働省の通知とQ&Aを読んで、パートの妻と、その夫が、何を確かめて何を出せば扶養のままでいられるかをまとめました。

この記事の結論

  1. 2026年4月から、130万円は労働条件通知書などの労働契約の内容(時給×時間×日数)で見込んだ年収で判定する
  2. 契約に無い残業代は、その年収に入らない。 ただしシフト制など時間が決まっていない契約は、今までどおり給与明細などで判定
  3. 一時的に130万円以上になっても、会社(事業主)の証明で、原則として連続2回まで扶養のままでいられる

130万の壁とは

130万の壁は、社会保険の扶養の基準です。会社員の夫に扶養されている妻は、夫の健康保険の被扶養者になり、国民年金では第3号被保険者になります。妻は自分で健康保険料や年金保険料を払わずに済みます。

日本年金機構は、第3号被保険者を、会社員・公務員に扶養されている配偶者で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の人としています。妻の年収が130万円以上になると、この扶養から外れて、自分で保険料を払うことになる。これが「130万の壁」です。

所得税の配偶者控除の「136万円」や「207万円」とは別の基準です(税の話は最後のよくある質問で)。

出典:日本年金機構「国民年金の『第1号被保険者』、『第3号被保険者』とは何ですか。」

130万の壁の新ルール(2026年4月から)

厚生労働省の通知(令和7年10月1日)で、被扶養者の認定のときの年収の見方が変わりました。令和8年4月1日から、次の形で判定します。

  • 労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満
  • ほかの収入が見込まれない
  • 同一世帯なら、夫(被保険者)の年間収入の2分の1未満

この3つに当てはまれば、原則として被扶養者に当たるものとして扱われます。確認は、会社が渡す労働条件通知書など労働契約の内容が分かる書類と、妻の「給与収入のみである」という申立てで行います。労働契約を更新したり条件が変わったりしたときは、そのたびに書類を出します。

年金や事業の収入など、給与のほかにも収入がある人は、この取扱いではなく従来どおりの判定です。

出典:厚生労働省 通知「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」/厚生労働省「『年収の壁』への対応」

残業代は年収に入る?

厚生労働省のQ&Aでは、労働契約に明確な規定がなく、契約の段階では見込みにくい時間外労働の賃金(臨時収入)は、被扶養者の認定の年間収入に含まれないとされています。年間収入は、労働条件通知書などに書かれた時給・労働時間・日数で計算した見込額で判断します。

さらに、契約に時間外労働の規定がなく、見込みもなかった場合は、認定の時点ですでに残業が発生していても、この新しい取扱いで判定するとされています。

ただし、全員が契約書で決まるわけではありません。

  • 「シフト制による」のように労働時間の書き方がはっきりしない契約
  • 契約期間が1年に満たない契約

こうした場合は、労働契約の内容で年収を判定できないため、従来どおり給与明細書や課税(非課税)証明書などで判定します。また、この取扱いは認定日が4月1日以降のものに使われ、令和8年4月1日より前にさかのぼって認定する場合は、従来の取扱いです。

出典:厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&A」

交通費・手当・賞与は入る?

通知と日本年金機構の案内では、判定に使う「労働条件通知書」等に書かれた賃金は、労働基準法第11条の賃金で、諸手当および賞与も含まれるとされています。労働基準法第11条は、賃金を「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定めています。契約で決まっている手当やボーナスは、見込みの年収に入れて計算します。

交通費(通勤手当)はどうか。「通勤手当は130万円に含む」とはっきり書いた公的な文は見つかりませんでした。 ただ日本年金機構は、年間収入を判定できない例として、契約期間が1年未満の場合や「シフト制による」と書かれている場合と並べて、「通勤手当有」等となっていて手当の金額が分からない場合を挙げています。通勤手当も、契約の賃金に含めて見込むのが基本のように読めます。

  • 労働条件通知書に通勤手当の金額が書かれているかを見る(「通勤手当有」だけだと、この取扱いで判定できない)
  • 入れるかどうかの最終的な判断は、夫の勤め先の健康保険(健康保険組合や協会けんぽ)か年金事務所に確かめる

出典:厚生労働省 通知(令和7年10月1日)/日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」/e-Gov法令検索「労働基準法」

130万の壁は月いくら?

日本年金機構は、年間収入とは過去の収入ではなく、扶養に入る時点と認定された日以降の、1年間の見込みの収入額だとしています。そのうえで目安として、

  • 給与所得などの収入がある場合は、月額108,333円以下
  • 雇用保険などを受けている場合は、日額3,611円以下

であれば要件を満たす、と書いています。

ただし新しい取扱いで見るのは、その月にいくら入ったかではなく、労働契約の時給・時間・日数から見込んだ1年分の額です。ある月だけ残業で多くなっても、契約に無い残業なら見込みの年収は変わりません。

自分の契約で確かめるなら、労働条件通知書を出して、次の順で見ます。

  1. 時給(基本給)と、契約で決まっている手当・賞与を書き出す(通勤手当は金額が書かれているかも見る)
  2. 1日の労働時間と、週・月の勤務日数を書き出す
  3. 時給×時間×日数に手当・賞与を足して、1年分の見込額が130万円未満かを見る

もう1つ、「月いくら」で効いてくるのが、月額8.8万円です。これは130万円とは別の、妻が自分で社会保険に入るかどうかの基準(いわゆる106万円の壁)のひとつです。次の章で書きます。

出典:日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」/厚生労働省 Q&A/厚生労働省「社会保険加入の要件」

扶養のままでいるための手続き

扶養の認定は、妻の会社ではなく夫の勤め先の健康保険が行います。新しい取扱いで認定してもらうときの流れは、こうです。

  1. 妻が、パート先から渡された労働条件通知書(労働契約の内容が分かる書類)を用意する。手元に無ければ、パート先に出してもらうよう頼む
  2. 通知書に、時給・労働時間・日数・手当の金額がはっきり書かれているかを見る。「シフト制による」「通勤手当有」のように時間や金額が分からない場合は、新しい取扱いで判定できないので、給与明細書や課税証明書を用意する
  3. 夫が、自分の会社の人事・総務の担当に、妻の被扶養者の認定(毎年の確認を含む)で出す書類を聞く
  4. 労働条件通知書の写しと、妻の「給与収入のみである」という申立てを、夫の会社を通して健康保険に出す
  5. 契約を更新したり、時給や時間が変わったりしたら、そのたびに新しい通知書を出す

申立ての書き方(様式)は、健康保険組合や協会けんぽによって違うことがあるので、夫の会社の案内に合わせてください。

出典:厚生労働省 通知(令和7年10月1日)/厚生労働省 Q&A

一時的に130万円を超えてしまったら

シフト制などで新しい取扱いの対象にならない人や、契約の外で収入が増えた人のために、前からある仕組みもあります。

毎年の被扶養者の認定のときに、人手不足による労働時間の延長などで一時的に年収が130万円以上になった場合は、過去の課税証明書・給与明細書・雇用契約書などに加えて、一時的な収入であることを事業主(パート先の会社)が証明した書類を添えれば、原則として連続2回まで、引き続き扶養に入り続けることができます。この仕組みは「年収の壁・支援強化パッケージ」の中で恒久化されていて、期限のある一時的な措置ではありません。

  1. パート先に、一時的に収入が増えたことの「事業主の証明」を書いてもらうよう頼む
  2. 課税証明書・給与明細書・雇用契約書などとあわせて、夫の会社を通して健康保険に出す
  3. 何回目の証明になるかを、家族で記録しておく(原則として連続2回まで)

困ったときの相談先は、まず**夫の勤め先の健康保険(健康保険組合や協会けんぽ)**と、夫の会社の人事・総務の担当です。

出典:厚生労働省「『年収の壁』への対応」/厚生労働省 リーフレット「パート・アルバイトで働く『130万円の壁』でお困りの皆さまへ」

130万円未満でも扶養から外れる人

130万円未満でも、妻が自分の勤め先で社会保険に入る条件を満たすと、扶養から外れます。日本年金機構も、年収130万円未満であっても厚生年金保険の加入要件にあてはまる人は第3号被保険者に当たらない、としています。

厚生労働省の特設サイトが挙げる、パートで社会保険に入る条件は、次の全部に当てはまる人です。

条件内容
①勤め先の従業員数51人以上(2027年9月まで。36〜50人の企業は2027年10月から、21〜35人は2029年10月から、11〜20人は2032年10月から、10人以下は2035年10月から対象)
②週の所定労働時間20時間以上
③学生か学生ではない
④所定内賃金月額8.8万円以上(2026年10月に賃金要件を撤廃予定)
⑤雇用の見込み2か月を超えて雇用される見込みがある

④の賃金の要件(いわゆる106万円の壁)について、特設サイトは「2026年10月に撤廃予定」と書いています。法律(2025年6月13日に成立した年金制度改正法)のほうは、全国の最低賃金の引上げの状況を見極めて、公布から3年以内に撤廃するとしていて、言い方が違います。勤め先がいつから対象になるかは、パート先に確かめるのが確実です。

出典:厚生労働省「社会保険加入の要件」/厚生労働省「年金制度改正の全体像」/日本年金機構

学生・60歳以上の家族は基準が違う

130万円は、扶養に入れる家族によって基準が変わります(厚生労働省の通知の注)。

扶養に入れる家族年間収入の基準
原則(配偶者など)130万円未満
19歳以上23歳未満の親族(配偶者を除く)150万円未満
60歳以上の人、または概ね障害厚生年金の受給要件に当たる程度の障害者180万円未満

大学生の子がアルバイトをしている家は、社会保険の扶養では150万円未満が基準です。これは税の特定親族特別控除(給与だけなら136万円超197万円以下の子が対象)とは別の制度なので、混ぜないでください。

また、社会保険に入る条件の③にあるとおり、学生は、パート先の社会保険に入る対象から外れています。

出典:厚生労働省 通知(令和7年10月1日)注2/厚生労働省「『年収の壁』への対応」/国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」

やってはいけないこと

  • 「契約に残業が書いてあっても入らない」と思い込まない。 Q&Aが年収に入らないとしているのは、契約に明確な規定がなく、見込みにくい時間外労働の賃金です。契約に書いてある場合の扱いは、Q&Aに明記がありません
  • シフト制の契約で、新ルールが使えると決めつけない。 時間がはっきりしない契約は、従来どおり給与明細書などで判定です
  • 「交通費は入らない」と決めつけない。 賃金には諸手当が含まれ、「通勤手当有」で金額が分からない契約は判定できない例に挙がっています
  • 130万円だけ見て、週20時間・月額8.8万円の条件を見落とさない。 自分で社会保険に入ると、130万円未満でも扶養から外れます
  • 事業主の証明を、毎年いつまでも使えると思わない。 原則として連続2回までです

出典:厚生労働省 Q&A/厚生労働省「『年収の壁』への対応」

よくある質問

税金の扶養も130万円で決まる?

いいえ。夫の所得税の配偶者控除は、令和8年分は妻の給与だけなら136万円以下、配偶者特別控除は136万円超207万円以下が対象です(夫の合計所得金額が1,000万円以下の場合)。130万円は社会保険の扶養の基準で、税の扶養とは別に決まります。

出産手当金や失業給付も、130万円の収入に入る?

入ります。日本年金機構は、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれるとしています。パートの給料が止まっている産休中や、仕事を辞めて給付を受けている間も、これらの給付を含めて見込むことになります。雇用保険などを受けている場合の目安は、日額3,611円以下です。

社会保険に入ると、損なだけ?

厚生労働省は、社会保険に入るメリットとして、病気やけがで休んだときの傷病手当金(4日目から通算1年6か月、給与の2/3)、出産で休んだときの出産手当金(給与の2/3)、年金が2階建てになることを挙げています。扶養されていた人(年収106万円の場合の例)が20年間加入すると、年金額が**月8,800円(終身)**増えるとしています。

パート先で新しく社会保険に入ると、保険料が軽くなる仕組みはある?

2026年10月1日以降に労使の合意で社会保険に入った事業所や、2027年10月以降の適用拡大で対象になる事業所では、週20時間以上・月収13万円未満などの従業員について、事業主が保険料を一時的に多く負担して、通算3年間、従業員の保険料負担を軽くできる「保険料調整制度」があります。使えるかは、パート先に確かめてください。

新ルールはいつから使える?

認定日が令和8年4月1日以降のものからです。それより前にさかのぼって認定する場合は、従来の取扱いです。

まとめ

  • 130万の壁は社会保険の扶養の基準。2026年4月からは、労働契約の時給・時間・日数で見込んだ年収で判定する
  • 契約に無い残業代は入らない。 ただしシフト制など時間がはっきりしない契約は、従来どおり給与明細書などで判定
  • 手当と賞与は「諸手当および賞与も含まれる」。交通費は含めて見込むのが基本のように読めるが、明記した公的な文は無いので夫の健康保険か年金事務所に確かめる
  • 月の目安は、日本年金機構によると月額108,333円以下(雇用保険などを受けている場合は日額3,611円以下)
  • 出すのは労働条件通知書と「給与収入のみ」の申立て。夫の会社を通して健康保険へ
  • 一時的に超えても、事業主の証明で原則として連続2回まで扶養のまま
  • 130万円未満でも、週20時間以上・月額8.8万円以上などの条件を満たすと、自分で社会保険に入って扶養から外れる
  • 19歳以上23歳未満は150万円未満、60歳以上は180万円未満。税の扶養(136万円)とは別

年末にシフトを減らす前に、まず労働条件通知書を1枚出して、家族で見てみてください。

この記事は2026年10月14日時点の厚生労働省・日本年金機構・国税庁の公式情報をもとにしています。認定の書類や手順は健康保険組合などによって違うことがあるので、出す前に夫の会社と健康保険の案内も確認してください。

かける

この記事を書いた人:かける30代・2児のパパ会社員。夫婦で貯金0から、1年で150万円貯金。

制度・金額・期限は、国や各社の公式ページで確かめたことだけを書いています。手続きの前には公式の情報も確認してください。

くわしいプロフィール / Threads @monelife_kakeru

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